「ビジネススキルとしてロジカルシンキングはもはや必須」なんて言われ始めていますが「そもそもロジカルシンキングとはなんぞや?」ってこっそり首をかしげてしまうことってありますよね。
ロジカルシンキングとは、簡単に言うならば「問題を理論的に整理し、解決策を導く方法」のこと。問題解決や情報整理に効果的なので生産性の向上に役立ちますし、相手に理解しやすく説得力のあるアウトプットができるというメリットがあります。
と聞くとなんだか、一部の人にしかモノにできない、難しく特別な思考法のように思えてしまいますが、実は日頃から意識さえすれば、誰でも自然と身につけられしまうのです。
そこで今回は、ロジカルシンキングの基礎を身につけるためのトレーニングとなり得る思考パターンについてお伝えします。
些細なことにも疑問を持ちましょう
ロジカルシンキングを身につけるためには、とにかく些細なことでも疑問を持ち、自問自答する癖をつけてみましょう。疑問を持つ対象はなんでもO.K。ニュースや時事ネタでもいいですし、日常生活のほんの小さなことでもかまいません。
どうして今日の空は青いのか、電車の込み具合を占有率に置き換える、などなど、見渡してみたらネタはあなたの周りにたくさんちりばめれられています。ただし、ロジカルシンキングとは「論理的思考法」です。
感情や個人的感想はいったん頭の片隅に置いといて「根拠」を導き出すよう自問自答を続けていくように心がけてみましょう。
やがてシンプルかつ明確な答えにたどり着くはずです。気になったことを「理論づけて」「突き詰めて」考えるようにしてくださいね。
論理を積み重ねて考えていきましょう
ごく自然にロジカルシンキングが浮かぶようになるために活用したいのが「論理を積み重ねていく考え方(演繹法:えんえきほう)」です。誰もが納得できる明らかな道理から答えを導き出していきます。
大前提・小前提・結論からなるアリストテレスの三段論法、と聞くと思い当たる人も多いのではないでしょうか。ロジカルシンキングは数学的・哲学的考え方を前提として思考をめぐらせて行くことでも鍛えることができるのです。
この方法は簡単な論法ゆえによく使われる手法でもあるのですが、前提をたくさん出しすぎてしまうと、結論に至るまでの過程が無駄に膨らみすぎて、かえって自分の中でこんがらがってしまうことがあるので要注意。
論理が繋がらなくなったり、結論が成立しなかったり、そもそも前提からつまづいていたりする危険性がありますから、思考を飛躍させすぎないようにセーブすることも大切です。
共通点から結論を導き出してみましょう
ビジネスシーンにおいて、ロジカルシンキングは強い味方になってくれます。「共通点から結論を導き出す方法(帰納法)」もロジカルシンキングの1つ。統計分析と言うとわかりやすいでしょうか。
説得という方法をとるときに、「視覚化」と「明確な数」はかなり有効。しかも「数」は多ければ多いほどデータとしての真実味と正確性を増していきます。
できる限り多くの情報を集め、共通点を割り出し、傾向やパターンを明確化する……これが相手を納得させるための強力な武器となってくれます。
ただし「数が多ければ多いほど、軸がしっかりしていなければ、膨大な情報量を捌ききれず、主張そのものがあいまいになってしまう」という点においては注意が必要です。
2つの事柄に生じる矛盾からより高度な理論を導きましょう
ロジカルシンキングをより実践的にとらえるには、もう一歩踏み込んで考えてみる必要があります。「2つの事柄それぞれの本質を保存しつつ、より上位の認識に至る(弁証法)」という理論です。
ある命題(テーゼ)とそれに矛盾する、もしくは否定する命題(アンチテーゼ)、この2つを本質的に統合した命題(ジンテーゼ)から構成される……という定義を聴くだけでも頭が痛くなりそうですね。
つまるところ「テーゼ(正)」 対「アンチテーゼ(反)」 → 「ジンテーゼ(合)」です。しかしジンテーゼはただ単純に双方のいいところ取りというわけではありません。
テーゼとアンチテーゼの中に含まれる矛盾のぶつかり合いから生まれる葛藤が、より高い概念から答えを導き出す起爆剤となるのです。
こんなことまで考えなくてはいけないロジカルシンキングは難しい、と尻込みしてしまいそうになりますが、弁証法の説明は、よく
正:固定電話(身近にあるが外出時は使えない)
反:公衆電話(外で電話できるが必要時に常にあるとは限らない)
合:携帯電話(身近にありかつ外出時も使用が可能である)
という例えで説明されることが多いようですよ。
ロジカルシンキングのデメリットも知っておきましょう
ビジネスシーンにおいてロジカルシンキングは有効、とはいえ万能ではありません。ロジカルシンキングは基本的に「自分の頭の中を整理するための方法」という位置づけとして考えておく方が無難です。
なぜなら、ロジカルシンキングは「情報処理及び整理」「伝達方法」としては有能ですが、「感情のやり取り及び対立」「相手の理解度」といった、コミュニケーション面に関してはかえって裏目に出る可能性を含んでいるというデメリットが存在するからです。
ビジネスに感情は不要……という正論だけではいかないのが人間の心理。人対人とのやり取りには少なからず情緒や感情が絡み、それが良くも悪くも世の中を回しています。
正論の押し付けで相手の反感を買ってしまっては意味がありませんよね。メリットとデメリットを把握して、うまく活用していきましょう。
以上、ロジカルシンキングを身につけるための思考法と、知っておきたい裏の面についてお伝えしました。
「演繹法」「帰納法」「弁証法」の3つの違いを理解し、実生活の中に取り入れることで、自然とロジカルシンキングはスキルアップしていきますし、膨大な量の情報も自分の中でしっかりと整理できるだけはなく、説明・説得の際には「相手がいる」ということを常に念頭に置いて理論と感情の動きをドッキングさせて活かしていけば、コミュニケーションスキルの大幅アップも見込めます。
とらわれすぎれば机上の空論となるほか、突発的なアクシデントに対しどれだけ迅速に軌道修正できるかがカギとなるものの、身につければビジネスシーンの心強い武器となるのがロジカルシンキング。あなたもぜひこの機会にモノにしてみましょう。